跳ね上がった心で気付いた
「もう、うるさいっ!」
何度目かの同じ質問に、ハトが振り向きざまに怒鳴った。
「何なのもう、言わないっつってんでしょ!?」
「そうやって隠すから余計気になんじゃねーか」
「大体なんでそんな聞きたがんのよ」
「ヒャハ! 面白れーからに決まってんだろ」
「うわ、最悪倉持」
ほら言えって、と再び突ついたら、ハトは眉を下げて露骨に弱った顔をした。
さっきから何を言ってるかといえば、俺が聞きだそうとしてんのはこいつの好みのタイプだったりする。
ぶっちゃけどうでもいいけど、普段は俺や御幸と対等に渡り合ってるこいつがこんなに動揺するのは初めてだ。
それが珍しくて面白くて、ついつい話題を引っ張ってからかっちまってんだけど。
「つーか、大体好みくらい隠すことでもねぇだろ。好きな奴言えっつってんじゃねーんだから」
「……だったら倉持が言いなさいよ。そしたら答えてやるから」
「俺?」
思いがけない言葉にちょっと驚いて、机にへばり付きかけてた体を起こした。
一方のハトは、どうよとばかりに強気な態度で見下ろしてくる。それで反撃のつもりかよ。
「言っとくけど俺統一されてねーぞ。毎回変わるし」
「もしかして好きな人が好きなタイプだったりする?」
「多分な」
あんまりそういう意識はないけど、後々考えるとそのときの好みと同じだったってパターンが多い。
つーか、普段から好みだの何だの考えてねぇっつーのが本音だ。
好みだから好きになったのか、好きになったから好みなのか、はっきりいって覚えがない。
「じゃあさ、倉持の今のタイプってどんなの?」
「今? 今は……」
ちょっと考える素振りをしたら、ハトがさっきとは打って変わって、興味深々で身を乗り出した。
その切り替えの早さに笑いがこみ上げる。……けどそういう所は。
「……単純で面白いっつーか。だからかもしんねーけど、さっぱりしてんのはいいよな」
「ふんふん、ボーイッシュなほうがいいってこと?」
「別にそういうわけでもねーんじゃねーの。黙ってりゃおとなしく見えなくもねぇし」
「…ふ、ふーん?」
「ヒャハ! でも喋ると結構気ィ強ぇよな。まぁ、変に遠慮しなくていいから男同士みたいで楽で……」
「あの倉持? 楽しそうなところ悪いけど、やけに具体的じゃない?」
「は?」
私これ聞いてていいの?と困ったように笑いながら、ハトが俺の後ろに座る御幸に問いかける。
……ちょっと待て。俺今、何をべらべら喋ってた?
誰を見て、誰の事を思い浮かべて話してた?
――――俺は、今。
「倉持?」
ハトが呆然とする俺の顔を覗き込んだ途端、心臓が痛いくらいに大きく鳴った。
跳ね上がった心で気付いた
(こいつが好みになったのは、一体いつの頃からだった?)
title:恋したくなるお題