冗談なの?本気なの?
1年マネージャー柚原小鳩の方言好きは、野球部内では有名だった。
「ねー春っち、沢村ってどこ出身か知ってる? よく聞いたらイントネーションちょっと違うことに気付いてさ」
「へえ、そうなんだ? あんまり気にしたことなかったけど、確か長野じゃなかったかな」
「ちょ、気にして! たまーにぽろっと使うんだけど、結構可愛いよ!」
「そ、そうなんだ」
どうやら朝練の時にでも使ったのか、教室に戻るなり駆け寄ってきた小鳩の興奮ぶりに小湊は少々苦笑した。
「ゾノ先輩って大阪? 関西弁だよね」
「多分そうじゃないかな。聞いたことないけど」
「野球部って各地から集まってきてるから、もう会話聞いてるだけでニヤニヤしちゃうんだよね~」
「……うん、でも小鳩ちゃんはちょっとそういうの控えた方がいいと思うよ」
へらへらと顔を緩ませる小鳩に、ちょっと怖いからという小湊の忠告は耳に入らないらしい。
諦めたように溜息をついた後、小湊はふと思い出して後ろを振り返った。
「そういえば降谷くんは北海道じゃなかった?」
「そうだけど……」
「えーっ、そうなの!? 全然気付かなかった!」
初耳だと今度は降谷の机に両手を置いて、身を乗り出す。
「降谷あんまり喋んないんだもん。北海道も方言あったよね、なまら~、とか可愛いの」
「可愛いかは知らないけど、あるよ」
「聞きたい聞きたい!」
「無理」
「えー、何でよっ」
あまりにあっさりばっさりと切り捨てられ、不満全開で小鳩は唇を尖らせた。
何でもいいんだけど、と更に食い下がるが、降谷の答えは変わらない。無理、の一点張りである。
そのやり取りに、そろそろ降谷も怒りだすんじゃないかと小湊が心配したが、そこは彼が小鳩の天真爛漫さを気に入っているからだろうか。
「地元じゃないと出ない」
とさらりと流した。
「ああ、周りの影響ってあるらしいよね」
「えええ、じゃあ降谷の方言聞くためには北海道までついてかなきゃいけないわけ?」
それを聞いてようやく諦めたのか肩を落とした小鳩に、相変わらずの無表情で降谷が続ける。
「次の連休に、一度地元に戻るけど」
「………はい?」
何を言われたのかと彼を見るが、その表情からはよく意図が読み取れない。
「えーと、それって」
もしかして、誘ってます?
口に出す代わりに、小湊と小鳩はどちらからともなく顔を見合わせ、半笑いと共に目を瞬かせた。
冗談なの?本気なの?
(頼むから笑うか照れるかしてくれないかな)(リアクションに、困る……!)
title:恋したくなるお題