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パフェより甘い恋をしませんか



ちょっとした現世任務が舞い込んできて、現世慣れしてる俺とめばえが選ばれた。
仕事を片付けた後、お勧めのお店があるから行きましょうと連れて行かれたのは、小洒落たカフェって奴で。
はっきりいってこいつが一緒じゃなかったら男には入り辛い場所だった。
とは言えこいつに、

「機会があったら、恋次先輩と行きたいと思ってた場所があるんです」

なんて満面の笑顔で言われたら断れるわけもなく。



「つーか、何で俺なんだ? 明らかに場違いだろ」


義骸も赤髪、刺青満載の俺は、確実に浮いてる気がする。
一生懸命メニューを眺めるめばえとは裏腹に、居心地の悪さから頬杖をついて問いかけたら、良くぞ聞いてくれましたとばかりに嬉しそうな顔をした。


「恋次先輩、たい焼きお好きでしたよね?」
「ああ、まぁな」
「ここに“たい焼きパフェ”って言うのがあるんですよ。結構人気らしくて」

そう言って注文をとりに来た店員に同じ単語を告げると、満足げにメニューを閉じる。

要するにあれか。俺の好物が使われてるから、喜ばせようとしたってことか。
こういう所が本当に可愛い奴だよなぁ、と緩みかけた口元を抑えてつくづく思う。
もっともこいつのそういう言動に、特別な意図が含まれてんのかっつーとまた謎なんだが。

やがて俺達の前に運ばれてきたものといえば。
ガラスの器を生クリームと抹茶アイスで敷き詰め、その上に一口サイズのたい焼きが3つ乗るという見た目にも圧倒される代物だった。


「なんだこりゃ? こんなもん、どうやって食うんだよ?」
「先輩先輩、この長いスプーンとフォークを使うんですよ」

下手に突ついたら崩れそうなそれを、めばえは慣れた様子でスプーンに掬って口へ運んでいく。
こいつは他の死神の誰よりも現世滞在期間が長い。
現世にいたって腹が減るのは変わんねぇし、こういう場所にも義骸を着てよく通ってたんだろう。
とりあえず上に乗ってるたい焼きを口に放り込んだら、小さいながらもしっかりたい焼きの味をしていたことに驚いた。

「おっ、うめぇ!」
「気に入りました? よかったぁ、こういう変り種はもしかしてだめかなーって心配もしたんですけど」
「たい焼きがちょっと物足りねぇが、こういうのも有りだな」

たい焼きの下に埋まってる冷たいアイスやクリームも、一緒に食うとまた違ったうまさだ。
夢中になって食べてたら、そのうちめばえがクスクスと小さく笑いを零した。


「恋次先輩って結構甘党ですよね」
「そうか? つってもたい焼きくらいしか普段あんまり食わねぇけどな」
「甘いもの好きな男の人って恋愛上手らしいですよ」
「ごふっ!」
「わあっ!? ちょ、先輩大丈夫ですか!?」

い、いきなり何言い出すんだこいつは!? 思わず噴いちまったじゃねぇか!
むせ返る俺に水を差し出して心配そうな声を上げたくせに、

「……で、どうなんですか?」

と興味津々な目をむけてくる。

「知るかよ。大体、食い物の好みとどういう関係があんだ」
「関係はわかんないですけど。でも恋次先輩って実際人気ありますよね」
「さぁな、副隊長だからだろ」
「それだけじゃないですよ。男らしいし頼れるし、護ってくれそうって評判高いんですからっ」

まるで自分の事みたいにむきになるから、それがちょっと嬉しくて、つい。


「……じゃあ、試してみるか?」


まだ言うつもりのなかった言葉が、するりと口から滑り出た。



「俺と付き合えよ」





パフェより甘い恋をしませんか
(お前を好きな気持ちなら、誰にも負けない自信があんだ)




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